都立国分寺高校卒業生47~52期による劇団

脚本の書き手の裏話【ブログリレー企画第2回】

こんにちは。「愛と極星」脚本/たまに美術系にも口を出す毛利です。今、この文章はタンポポを輸送しつつ(※1)書いています。

ブログ執筆2番手を任されました。三分ほどじっくり色々考えたのですが、折角なので私にしか書けないテーマ「脚本家の生態」についてお話ししようと思います。

脚本家(※私の場合)は様々な生態が知られています。
代表的なものとして「やる気にムラがある」「新しいネタに目移りする」などが挙げられますが、今回は「すぐ自分の作品を卑下する」生態についてお話ししようと思います。

 

・脚本家の生態(すぐ自分の作品を卑下する)について

 

脚本家は常に自分の作品の出来に対して懐疑的です。自分の書いた話に対して「これ本当に面白い?」と何度も聞いてしまうことがよくあります。「どうせ『そんなことないよー』待ちでしょ?」と思うかもしれません。
でも、ちゃんと理由があるんです。それは何か。

 

創作物の楽しみ方は大きく分けて二つあります。

①驚く楽しみ方(初見で「続きはどうなるの!?」とドキドキする楽しみ方)

②深める楽しみ方(何度も読んで「この文章はこういう意図だったのか」と頷く楽しみ方)

 

しかし、脚本家は自分の書いた話を『発表当日までに』『セリフを覚えてもらう前に』『人に見せる前に』何度も何度も読むことになります。
もうお分かりですね。自分で書いた話から、①の驚きはどんどん薄れていきます。知ってる。どこで何が起きるか。宇宙人が出るとか結婚式するとかもう全部知ってる。何だこの脚本。先が読めすぎる。つまらん。
また、②の深める楽しみなんて端から存在しません。私が全てを作った。私の知らないことは何もない。完。

おわかりいただけたでしょうか。脚本家は、書いた話の面白さを日々見失っていきます。何なら頭に浮かんだ瞬間が面白さのピークです。試してみるといいでしょう。自分で書いた文章を十回読んでみてください。どうですか?それ本当に面白い?

 

まとめます。

もしも身の回りの脚本家が、自分で書いた作品に対して「これ本当に面白い?」と聞いてきたら、優しく「面白いよ」と言ってあげてください。同情を惹きたい訳じゃない。本当に分からないんです。

何なら自動化してもいいでしょう。以下にPythonで作成したコードを載せておきます。

 

while True:
    user_input = input("入力してください:")
    if user_input == "これ本当に面白い?":
        print("面白いよ")
    else:
        break

 

さて、本日は脚本家の生態「すぐ自分の作品を卑下する」についてお話しさせていただきました。

最後に、重要な点を一つ。もしも、「これ本当に面白い?」と聞かれた脚本が、マジでつまらなかった場合。
その場合は「いやつまんないよ」とトドメを刺してください。つまんない作品を表に出すくらいなら死んだ方がマシです。慈悲ある介錯をお願いします。

 

さて。どうして突然、脚本の話をしたのか。それは私が、第5回定期公演『FRAME』にて短編三本の脚本を担当しているからに他なりません。話の内容はまだ詳しくはお話しできませんが、今回も出てきますよ、宇宙
第四回定期公演同様、今回も皆さんに楽しんでいただけるよう頑張りました。ぜひ2023年8月25日(金)、26日(土)、27日(日)は現代座会館現代座ホールにお越しください。
大丈夫、マジでつまらない時は無反応で返してくるミナさん(1つ前のブログ担当)が反応を返してくれたので面白いはずです。

 

なお、次のブログ担当は後輩であり私が勝手に同類と認定している(※2)ミヤこちゃんです。デザイン・企画に大忙し、現役美大生の彼女は何を語ってくれるのか。乞うご期待。




(※1)毛利は修士論文の研究材料としてタンポポを用いている。現在輸送中なのは浜辺に咲く小種ボウシュウタンポポ。中央線はGWでも普通に混んでいた。

(※2)以前なんの脈絡もなく「異星のたべっ子どうぶつって良くない?」という怪文章を送ったところ、即時に意味を理解しイメージボードまで描いてくれたため同類と認定した。

 

異星のたべっこどうぶつ(画:ミヤこ)